ドラマ「鉄の骨」|組織と一体化していく個人

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本作は、理想と現実の間でもがきながら成長していく若者の姿を描いた社会派エンターテイメントドラマです。

主人公の富島平太(神木隆之介)は、中堅ゼネコン「池松組」の若手社員です。

「談合」部と揶揄される業務部に異動した平太は、公共工事の受注を目指して奮闘していきますが、そこで目にしたものは、欲望やしがらみにまみれた世界でした。

「談合は必要悪」という大人の論理に対して、平太は組織人として、また一人の個人として、その答えを探していきます。

この記事では、本作の見どころについて語っていきたいと思います。


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目次

組織と一体化していく個人

「仕事人」と「組織人」

主人公の平太は、大学の建築学科を卒業した後に、池松組に入社しています。

入社してからは、自分の専門性と合致する建設現場の管理業務に従事しており、この仕事に深い愛情を持っています。

就職の面接でも「人々に夢を与える仕事がしたいんです」と語っており、生コンの上にタバコをポイ捨てした下請け社員を「煙草が生コンの水分を吸収して、その部分だけ強度が落ちるんですよ!」と叱りつけています。

このときまでは、平太は「仕事人(しごとじん)」だったのです。

仕事人とは、同志社大学の太田肇教授が提唱している概念であり、自分の仕事に対して一体化し、仕事を通して自分の目的を達成しようとする働き方のことです。

仕事人は、創造的・専門的な仕事に携わる研究職や技術職、デザイナーのように、組織内の評価よりも社会的に認められることを重視しています。

会社組織に一体化し、その中での昇進に生きがいを見出す「組織人」とは異なります。

「会社のために」

「仕事人」だった平太も、畑違いの業務部へと異動したことで変わっていきます。

業務部は、公共事業などの大口案件の受注を担当する「談合部」とも揶揄される部署でした。

大口の案件を受注して自分の会社の利益につなげるため、業界のフィクサーへの根回しを行っているのです。

ただ単に自分の仕事が好きというだけでは務まらないのです。

そこではどうしても「会社のために」という視点が必要となってきます。

業務部が仕事を取ってこなければ、現場管理の仕事も無くなってしまうのです。

平太も、段々と会社という組織に一体化していくのです。

フィクサーである三橋萬造(柴田恭兵)と交流を持ち、清濁併せ呑むような仕事をするようになり、彼女の野村萌(土屋大鳳)にも「談合って、犯罪じゃない!」と言われてしまいます。

このように、「会社のために」という大義名分で、法律から逸脱したことをやってしまうのは、共同体型組織のデメリットと言えるでしょう。

共同体型組織のデメリットとは

日本の企業に多いのですが、企業は一種の共同体であり、共同体のメンバーにふさわしい人物を採用し、育てようという考え方を持っています。

そして、いったん採用されたら、共同体の一員としてさまざまな形で庇護をうける一方、共同体の掟に従わなければなりません。 

人事評価においても、忠誠心貢献などが大きなウェイトを占めます。

共同体としての一体感を損なわないため、社員の処遇にも大差をつけない方針がとられます。

このような過程を通して、共同体の枠にふさわしい人材を育成していくのです。

こうした共同体的型組織には、人間関係の濃密な結びつきがあります。

そのような組織では、メンバーは個人的な利害や打算を超えた忠誠心・貢献が求められます。

「会社のために」という大義名分で、無理な目標に全員一丸となってチャレンジするということもあります。

そのために、しばしば企業の不正・不祥事に繋がったりするのです。

個人の欲求を利用する組織

「サラリーマンは、言われた通りに動くしかない」

人間は仕事を通して、多様な欲求を充足しようとしています。

達成、成長や自己実現といった次元の高い欲求は、組織全体に影響を及ぼすような意思決定に参加したり、重要な仕事を成し遂げたりすることによって充足することが出来ます。

個人が満足するような形で、組織がその個人の能力を最大限に発揮させることが出来れば、それは組織の利益にもつながります。

組織と個人のWIN-WINの関係が築けるのです。

しかしその個人の欲求が、組織にとって都合のいいように利用されるとどうなるか。

とにかく組織に忠誠を誓うことが正義となり、そこで働く個人は過度な貢献を求められ、その結果、不祥事の原因にもなってくるのです。

本作でも、萌に談合を辞めるように説得された平太は、こう答えます。

「俺、サラリーマンなんだよ。言われた通りに動くしかない」

談合がいい悪いという問題ではなく、「会社という共同体のためなら仕方ない」という、半ば諦めの境地とも受取れます。

会社に貢献しようとするあまり、社会というものが見えなくなっているのです。

まとめ

このように、本作では働く人が陥りがちな境遇をリアルに描いています。

入社したばかりのころは理想に燃えていた「仕事人」が、段々と「組織人」へと変貌していくのです。

組織で働く人なら誰でも、共感できるところがあるはずです。

組織の中で個人としてどう振る舞っていくか、考えるきっかけを与えてくれる作品です。

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